森 美樹(管理栄養士)
茨城県で生まれ、子供のころから母の手前味噌で育ちました。管理栄養士としては、病院・ 特養で栄養管理に従事。40 代になり、麹の美しさに惚れ込み、お味噌の魅力を知りました。 食事制限のある方もない方も、食卓を華やかに心豊かになっていただけるよう、発酵食品を 取り入れた食習慣のすばらしさを提案していきたいです。
日本人の食生活には欠かせない味噌。
特に味噌汁は、毎日の食事に欠かせない存在です。
具材を変えたり、味噌の種類を変えたりすることで、味噌汁は、変幻自在に私たちを楽しませてくれます。
しかし、最近では、塩分を気にして、味噌汁をはじめとする味噌を使った料理が敬遠される傾向があるのも事実です。
果たして、味噌の塩分は本当に高いのでしょうか。
また、味噌と血圧上昇にはどのような関係があるのでしょうか。
味噌汁の塩分は高い?
まずは、本当に味噌汁の塩分は高いのか、検証していきましょう。
味噌汁の塩分は?
実際に味噌汁を作ってみると分かりますが、味噌汁を作るときには、大量に味噌を使うわけではありません。
一般的には一人分の味噌汁に対して、大さじ1杯の味噌で作ると言われています。
では大さじ1杯の味噌には、塩分はどれくらい含まれているのでしょうか。
塩分量はどれくらい?
大さじ1杯の味噌は、およそ18g。
味噌の種類によっても多少の違いはありますが、一般的な味噌なら、大さじ1杯の味噌には、大体2.2gの塩分が含まれています。
どれくらいまでなら大丈夫?
厚生労働省が定める1日あたりの塩分摂取量は、健康な成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされていますが、高血圧を予防するためには、男女ともに食塩摂取量を6g未満とすることが推奨されています。
一杯分の味噌汁の塩分量を2.2gとするならば、三食全てに味噌汁を飲んでしまうと、それだけであっという間に一日の塩分摂取量の基準値に近づいてしまいます。
塩分摂取過多にならないためにも、ほかのおかずとのバランスを考えたり、味噌汁を飲む回数を調整したりすることが大切です。
美味しいと感じる味噌の塩分濃度
一般的に、人間が美味しいと感じる味噌の塩分濃度は、0.8%~1%程度といわれています。実は、この塩分濃度には、人間の体液や血液の塩分濃度が深く関わっています。
人間の体液や血液の塩分濃度は約0.8%。
人間は、自分の体液や血液の塩分濃度と同じくらいを「美味しい」と感じるようになっています。
算出方法
では、実際に味噌汁一杯あたりの塩分濃度を算出してみましょう。
算出方法は、次の通りです。
(味噌の量×(味噌の食塩相当量÷100g))÷できあがりの味噌汁の量(だし汁の量)×100
前述の大さじ1杯の味噌で作ると仮定し、この計算式に当てはめてみると、大さじ1杯の味噌は、およそ9g。
一般的な味噌100gあたりの食塩相当量を12.4gとし、150mlの出汁を使って味噌汁を作る場合、 (9g×(12.4g÷100g)÷150ml×100=0.7% となります。
塩分濃度は若干薄めにはなりますが、だしや具材のうま味が加わるので、充分美味しい味噌汁になります。
味噌と血圧の関係
まず、ここまでで、味噌汁のような味噌を使った料理に含まれる塩分は、世間一般のイメージほど高くはないことを説明してきました。
ここからは、実際に味噌と血圧にはどのような関係があるのかを解説します。
1日の塩分摂取量
ここで、1日あたりの塩分摂取量をおさらいします。
くり返しになりますが、厚生労働省が定める1日あたりの塩分摂取量は、健康な成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。
大さじ1杯の味噌に含まれる塩分量は、2.2g。
一人分の味噌汁に含まれる食塩の量は2.2gです。
たとえば、きつねうどん一人前に含まれる塩分は5.5gとされているため、味噌汁の塩分は決して高いとは言えません。
つまり、大前提として、味噌を大量に使い過ぎなければ味噌を使った料理は、他の料理と比較して、心配されるほど塩分濃度は高くありません。
つまり味噌を使った料理は、必ずしも高血圧に直結するわけではない/と言えます。
味噌に含まれるペプチドの効果
味噌は、大豆発酵食品の中でも、個体でも液体でもないという中途半端な立ち位置にあります。
実は、この立ち位置が、味噌の機能性に大きく寄与しています。
味噌の原料は大豆です。
大豆に多く含まれるタンパク質は、発酵の過程でアミノ酸に分解されていくのですが、その過程で、中間成分として生成されるのがペプチドです。
個体でもなく液体でもない、ペースト状の味噌だからこそペプチドが多く含まれます。
実は、ペプチドには血圧を下げる効果があり、ペプチドは、コレステロール制御や抗がん作用に効果があるとも言われています。
ペプチドを多く含む味噌は、健康を気にする人にこそ必要です。
また、味噌の摂取は、脳卒中などのリスクを高めるとされる夜間血圧を下げる効果があるという研究結果も出ています。
つまり、味噌は血圧を上昇させるのではなく、逆に血圧を降下させることができる機能性食品です。
飲むときに気を付けるポイント
味噌は、確かに健康に良い食品です。
しかし、正しく摂取しなければ、せっかくの効果を得ることができません 味噌汁の効果を最大限に引き出すために、気を付けるべきポイントを抑えておきましょう。
塩分を抑えるためにはどうしたらいい?
味噌汁一杯に含まれる塩分は、そう多くないとはいえ、やはり、摂取する塩分はできるだけ抑える必要があります。
できるだけ塩分を控えて、なおかつ美味しく味噌汁を飲むための工夫は、いくつか考えられます。
カリウムが多い具材を意識する
まず、具材にカリウムを多く含む食材を選ぶようにしましょう。
カリウムは、ミネラルの一種で、人間の体にとって非常に大きな役割を果たしています。
カリウムの働きは二つ。
一つ目は、体液の浸透圧を調整し、一定に保つ働きです。
二つ目は、ナトリウムを排出する働きで、この働きが塩分の摂取を抑制してくれます。
カリウムを多く含む食品としては、たとえば、サトイモなどのいも類、かぼちゃ、なす、キャベツなどが挙げられます。
どれも味噌汁にぴったりの食材です。
また、カリウムを多く含む食品を副菜に選んだり、デザートに果物を食べたりするとよいでしょう。
具だくさんにする
野菜やきのこなどを多く入れ、具だくさんの味噌汁にするのもおすすめ。
具材が増えれば、自然と汁の量が減るので、摂取する塩分量を減らすことができます。
具材には、味がしみこみやすい根菜類を選ぶと、食べ応えもアップします。
また、あらかじめ網やグリルで具材に焼き目をつけて香ばしさを加えることで、味のアクセントになり、塩味を控えても美味しさを感じられるようになります。
だしを効かせる
だしを効かせて、味噌汁自体のうま味をアップさせましょう。
市販されているだしの素は、手軽に使えますが、塩分が加えられているものもあるので、できるだけかつお節や昆布など、天然の素材でだしをとるのがおすすめです。
干しシイタケを使ってだしをとったり、うま味の濃いトマトを具材にしたりしてもよいでしょう。
またアサリやしじみなどの貝類からはよいだしが出るので、味噌汁の具材としてはぴったりです。
ゆずやすだち、ショウガなどを味噌汁の仕上げに加えても美味しく食べることができます。
OMISONOMORIが提案する 激うま減塩味噌汁レシピ
減塩でも、出汁のうま味をしっかり生かすことで、美味しく召し上がれるというのは前述のとおりですが、忙しい毎日の中で、毎回きちんと出汁をとって味噌汁を作るということは簡単ではありません。
そこで、食材を活かしてお味噌の旨みを味わう食感スープの簡単レシピをご紹介します。
こちらのレシピなら、一人分の味噌汁に含まれる塩分はおよそ1g。
一から出汁を取る必要がなく、手軽に激うま味噌汁を作ることができます。
美味しいお味噌は食材との相乗効果で美味しさ倍増! 暑い夏だからこそ!温活レシピ!
ネギたっぷりのプチプチお味噌汁
食感も楽しめる!ぽかぽか温活味噌汁
材料
- Aたまねぎ・長ネギ(青・白)みじん切り 大さじ1
- A生姜みじん切り 小さじ1~2
- Aごま油 小さじ1
- Bいりごま 小さじ1
- B「森でみつけたカツオの粉」 ひとつまみ
- B米#01~#03 お好みのお味噌大さじ1
作り方
- ごま油をひいてAの材料を生姜の香りが立ち、たまねぎの色が半透明に変わるまで炒める
- 150mlの水・または、ダシ汁を加える。
- Bの材料をお椀に盛っておく。
- Bを入れておいたお椀にAを注ぎ完成。
女子力アップ優しい味のお味噌汁!
胃腸に優しく腸内環境の改善に効果的!
材料
- A里芋(小)2個
- A鶏肉 40g
野菜は冷凍食品もOK - Bピーナツバター 大さじ1
- B米#04 大さじ1
作り方
- 沸騰した150mlのお湯にAの食材を入れて火を通す。
- Bの材料をお椀に混ぜておく
- Bを入れておいたお椀にAを注ぎ完成。
ピリ辛坦々お味噌汁
中華風お味噌汁の完成
材料
- 水 50ml
- 豆乳100ml
- A生姜小さじ1
- A豆腐1/4
- 砕いたアーモンド(お好きなナッツ)小さじ1
- Aにら1~2本
- B合わせみそ(米#01)
#02を小さじ1&米#04小さじ1でもOK - B練りごま大さじ1
- B豆板醤小さじ1/2
- ごま油小さじ1
- 万能ねぎ小さじ1
作り方
- 生姜を炒めて香りが出たら水50ml・豆乳100mlに食材を入れて沸騰しないように温める。
- アクが出てきたらとってAの材料を入れる
- Bの材料をまぜておく
- Bを入れておいたお椀にAを注ぎ、ねぎ・ごま油、お好みでラー油をトッピングして完成
美人になれる映えスープ
パン食にもピッタリの映えスープ!
材料
- 水150ml
- Aアボカド1個分または冷凍アボカド片手分
- Aプチトマト2個
- Aたまねぎ1/2個
- B麦05~06、お好みの麦味噌大さじ1
- とろけるチーズ、または粉チーズ適量
作り方
- アボカド・トマトは食べやすい大きさにカット
- たまねぎはスライスしておく
- 水にAを入れて沸騰したら弱火にする。
- Bの材料をお椀に盛る
- Bを入れておいたお椀にAを注ぎ完成チーズをトッピングして完成
使用する味噌を減塩タイプのものにするとさらに効果的です。
また、具材はレシピ以外にもお好みのものでいいのですが、旬の野菜や豆腐・油揚げなどを使って、なるべく具沢山にしてあげるのがコツです。
さまざまな食材のうま味が加わるほか、汁気も少なくなり、自然と塩分摂取量を減らすことができるので、具沢山にすることは減塩において一石二鳥の方法なのです。
まとめ
味噌は、昔から日本人の食生活に欠くことのできない存在です。
温かい真っ白なご飯に味噌汁、それだけでホッとするという人も少なくないはずです。
塩分摂取を控えたいから、という理由で味噌汁を敬遠するのは大きな間違いです。
味噌汁一杯に含まれる塩分は決して高くなく、味噌に含まれるペプチドは血圧を降下させるだけでなく、コレステロールを制御する、がんを予防するなどの効果もあります。
良質のタンパク質を多く含む味噌は「畑の肉」とも称されるほど。
多くの栄養を含み、味も良く、そして健康にもよい食材は、なかなか他には見られません。
日本全国それぞれの地域で、特色あるさまざまな味噌が作られています。
食材や調理法との組み合わせで、味噌の楽しみ方は無限大に広がります。
1300年以上の歴史を誇る、伝統的な食材、味噌の効用を正しく知り、上手に活用することで、私たちの食生活をより健康に、そして豊かにしていきましょう。