森 美樹(管理栄養士)
茨城県で生まれ、子供のころから母の手前味噌で育ちました。管理栄養士としては、病院・ 特養で栄養管理に従事。40 代になり、麹の美しさに惚れ込み、お味噌の魅力を知りました。 食事制限のある方もない方も、食卓を華やかに心豊かになっていただけるよう、発酵食品を 取り入れた食習慣のすばらしさを提案していきたいです。
味噌は健康にいい?
日本は長寿大国としても知られていますが、それは、日本人の食生活に負うところも大きいと言われています。
幅広い食材と相性がよい味噌は、古くから私たちの食卓に欠かせない万能調味料として愛されてきました。
さらに近年、味噌は、健康食品としても優秀なことがわかってきています。
では、味噌を食卓に取り入れることで、私たちの健康にはどのようなメリットが生まれるのでしょうか。
味噌の効果・効能
まずは、味噌が持つさまざまな効果・効能についてご紹介します。
二日酔い
二日酔い解消には味噌汁を飲むとよい、と耳にしたことはないでしょうか。
実は、味噌には、アルコールを早く体外に排出する効果のあるコリンという物質が含まれています。
飲み過ぎて二日酔いになってしまったら、朝ご飯にお味噌汁を飲むようにしましょう。
胃がん・乳がんのリスク低下
国立がんセンター研究所によると、味噌汁を飲む回数が多いほど、胃がんによる死亡率が低いという研究結果が出ています。
また、同じく味噌汁を飲む回数が多いほど、乳がんの発生率が減少するという結果も得られています。
これは、イソフラボンの摂取頻度が乳がんの発生に大きく関わっているからです。
欧米と比較すると日本の乳がん発生率が少ないのは、日本人は味噌を含む大豆製品を多く摂取しているからだと言えます。
胃潰瘍の防止
味噌は、胃潰瘍や胃炎など、胃の病気を防ぐ効果もあります。
これは、味噌に胃の粘膜を守る働きがあるからです。
味噌汁を飲む頻度が高い人ほど、胃潰瘍、胃炎、十二指腸潰瘍などの発生率が低いという研究結果も出ています。
コレステロール抑制
味噌に含まれるサポニンには血清コレステロールの上昇を抑制する効果があります。
また、同じく味噌に含まれるレシチン・食物繊維は、コレステロールを分解したり、排出したりするのに役立ちます。
美肌
味噌に含まれる遊離リノール酸は、体内でメラニン生成を抑制する効果があるので、シミやそばかすの生成を防ぐことができます。また、味噌に含まれるビタミンEやサポニンなどは細胞の酸化を防ぐ効果があるので、肌トラブルを防いでくれます。
さらに味噌には、水溶性食物繊維が豊富に含まれているので、腸内環境を整える効果もあります。
腸内環境が整えば肌荒れも起こりにくくなりますし、吹き出物もでき辛くなります。
味噌だからこそ活きるペプチド
さて、味噌はその形態も特殊です。
固体でもなければ、液体でもない、その中間であるペースト状の形態がもたらす利点はいろいろあるのですが、ここでは、ペプチドの含有量の多さに注目したいと思います。
ペプチドは、たんぱく質がアミノ酸まで分解される過程にできる中間成分ですが、このペプチドが味噌には多く含まれています。
大豆食品は、その発酵の過程で形状を変えていきます。
固体である煮豆の状態では、ペプチドは含まれませんし、発酵が進んで液体、つまり醤油になるとペプチドの含有量は少なくなってしまいます。
つまりペースト状の味噌だからこそ、含まれるペプチドの量が多くなるのです。
それでは、ペプチドを摂取するとどのような効果があるのでしょうか。
ペプチドの効果とは
ペプチドは、たんぱく質がアミノ酸まで分解されるまでにできる「いくつかのアミノ酸が結合した状態」の物質です。
そのため、体内に素早く吸収されます。
このペプチドには、血圧・コレステロールの上昇を抑える働き、抗がん作用があると言われています。
つまり、味噌の持つさまざまな健康効果に、このペプチドが大きく関わっていることがわかります。
味噌の産地
味噌はその土地によって、さまざまです。
その土地の気候や風土、食文化によって、味噌の味わいが異なるのが味噌のおもしろいところです。
味噌の産地と特長
それでは、日本各地の味噌についてご紹介します。
北海道
赤色系の中辛味噌がよく食べられています。
塩分は控えめ、すっきりとした味わいで、石狩鍋や、てっぽう鍋によく合います。
東北地方
寒冷な気候に合わせた、長期熟成型の赤色辛口味噌がよく食べられています。
長期熟成に耐えられるように、塩分が高めなのが特徴です。
関東地方
一般的に、辛口の米味噌が好まれますが、濃厚な甘みの江戸前味噌もよく食べられています。
江戸前味噌は、味噌田楽や柳川鍋などによく使われます。
北陸地方
淡色で辛口の米味噌がよく食べられています。
また、北陸地方は味噌の生産地としても有名で、全国の生産量のおよそ4割を占めています。
東海地方
東海地方では、赤褐色辛口の豆味噌が一般的に食べられています。
この味噌は、長期保存できるのが特徴です。
味噌カツや煮込みうどんには、この味噌がよく使われています。
関西地方
塩分控えめで、甘めの味噌が好まれます。
短期熟成型なので、長期保存には向かないのが特徴です。
中国地方
米味噌と麦味噌の両方が作られていますが、どちらも甘めの味わいです。
四国地方
四国地方では、甘口の米味噌が好んで食べられます。
米麹の割合が高いのが特徴です。
九州地方
甘めの麦味噌が多いですが、九州北部では辛口のものも食べられています。
だご汁やさつま汁、さくら鍋などによく使われています。
効果別お味噌の種類
味噌の原材料は、大豆・塩・麹です。
米味噌・麦味噌・豆味噌の別は、大豆と塩に、どのような麹を加えるかによって決まります。
たとえば、米麹を加えて作れば米味噌に、麦麹を加えて作れば麦味噌になります。
豆味噌は、大豆に種麹を付け、豆麹を培養して作ります。
どの味噌を摂取しても、今まで述べてきたような健康に良い効果は得られますが、効果別におすすめの味噌をご紹介します。
美容効果には米味噌
「美容効果」と言えば、特におすすめしたいのが米味噌です。
米味噌を作るときに加える米麹には、シミを薄くする効果があるとされているので、美肌作りにはもってこいです。
美容効果を高めるには、たとえば西京味噌のように、米麹をたくさん使った味噌を選びましょう。
生活習慣病予防には麦味噌
麦味噌にしか含まれない大麦β-グルカンという食物繊維があります。
この大麦β-グルカンは、血中コレステロール値を低下させ、血糖値上昇を抑えるという効果があります。
生活習慣病の予防には、麦味噌がおすすめです。
一番の効果を発揮できるのは豆味噌
豆味噌は、大豆と塩に大豆麹を加えて作るため、大豆の健康効果を最大限引き出せるのが特徴です。
豆味噌は筋肉を作る必須アミノ酸、ロイシン・イソロイシンを多く含むため、脂肪燃焼効果があるので、ダイエットにも効果を発揮します。
また、疲労を軽減したり、筋持久力を高めたりする効果もあります。
また、豆味噌には、女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをするイソフラボンも多く含まれています。
エストロゲンには、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す効果があるのですが、イソフラボンを摂取することによって、同様の効果が得られます。
コラーゲンやヒアルロン酸は、美肌作りには欠かせない成分ですから、豆味噌の摂取は美容にも非常に効果的だということが分かります。
さらにイソフラボンには乳がんの予防効果もあると同時に、骨粗しょう症の原因である骨吸収を抑制する効果があると分かってきました。
豆味噌は、美容・健康両面に効果を発揮する非常に優秀な味噌だと言えます。
ただし、豆味噌は、他の味噌と比較すると、やや塩分が濃い傾向にありますので、他の味噌と混ぜて使うようにするとよいでしょう。
まとめ
普段、私たちが何気なく使っている味噌ですが、美味しさや使いやすさだけではなく、味噌の持つさまざまな効能にも注目が集まっています。
味噌汁だけでなく、味噌漬け、味噌煮、味噌炒めなど、調理方法も非常にバリエーション豊かな上、野菜・魚・肉などさまざまな食材と相性がよく、食べ飽きるということがないのも味噌の魅力といってよいでしょう。
また、その土地によって異なる味わいの味噌があるので、自分好みの味噌を探す楽しみや、料理によって使う味噌の種類を変える楽しみもあります。
ただ食事をしているだけで、健康に、そしてきれいになれるのですから、味噌を積極的に使わない手はありません。
味噌をどのような食材と合わせたら、より美味しくなるか、より効果が得られるか、そのように考えながら献立を考えるのも楽しいものです。
味噌はこれまでもずっと、私たち日本人の健康を支え続けてきました。
日本が誇るスーパーフード、「味噌」をご家庭の食事に積極的に取り入れましょう。