森 美樹(管理栄養士)
茨城県で生まれ、子供のころから母の手前味噌で育ちました。管理栄養士としては、病院・ 特養で栄養管理に従事。40 代になり、麹の美しさに惚れ込み、お味噌の魅力を知りました。 食事制限のある方もない方も、食卓を華やかに心豊かになっていただけるよう、発酵食品を 取り入れた食習慣のすばらしさを提案していきたいです。
お味噌汁と高血圧の関係
海外旅行に行くと、白いご飯とお味噌汁が恋しくなる……そのような経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
白いご飯とともに、お味噌汁は、日本人のソウルフードとして長い間親しまれてきました。
しかし、近年の健康志向にともない、味噌に含まれる塩分が高血圧の原因になるのではないかという理由で、お味噌汁を敬遠するご家庭が増えてきています。
本当にお味噌汁は、血圧の上昇に関係があるのでしょうか。
お味噌汁は血圧抑制効果がある
最近の研究結果で、お味噌汁を飲むことで高血圧を引き起こすということはなく、むしろ高血圧を抑制することがわかってきています。
味噌に含まれるペプチド類の血圧を調整する効果が要因と考えられています。
ペプチド類と味噌
ペプチド類は、タンパク質がアミノ酸に分解される過程にできる中間成分です。
タンパク質が分解される途中で、アミノ酸が2個~50個未満に固まった状態のものがペプチド類です。
味噌の原料は大豆ですが、大豆が発酵する過程で、大豆に含まれるタンパク質がアミノ酸に分解されていきます。
大豆を使った調味料には、味噌のほか、醤油がありますが、ここまで発酵度合いが高まってしまうと、ペプチド類の含有量が減ってしまいます。
逆に、豆を煮ただけ、いわゆる煮豆の状態には、ペプチド類は含まれません。
つまり、発酵過程の途中段階である味噌だからこそ、ペプチド類の含有量が高いということになります。
お味噌汁と塩分
お味噌汁には塩分が含まれるため、高血圧によくないのではと言われることも多いですが、お味噌汁に含まれる塩分は、1杯につき、せいぜい1.5g程度にすぎません。
これは、たくあんで言えばたった2切れ、ハムで言えば3枚にしか相当しない塩分です。
きつねうどんを1杯食べると、塩分を5.3gも摂取してしまうことを考えれば、お味噌汁1杯分の塩分濃度は、そう高くないことがわかります。
血圧抑制効果のあるペプチド類を多く含むお味噌汁は、血圧を上昇させるどころか、人間が正常な血圧を保つためになくてはならないものです。
そのように考えれば、お味噌汁は、むしろ食卓に積極的に取り入れるべきなのです。
お味噌汁のその他の効果
血圧抑制に大きく効果のあるお味噌汁ですが、他にも胃がんや乳がん、糖尿病の抑制効果も認められています。
また、お味噌汁には大豆イソフラボンを多く含みますが、これは女性ホルモンに似た働きをするため、美容効果もあるほか、骨粗しょう症の予防にも効果があることがわかっています。
お味噌汁と健康について
お味噌汁を飲むことについては、ほかにもメリットがあります。
他の食材との相性が良く栄養が摂れる
さまざまな具材と相性が良く、1杯の味噌汁で多くの栄養を摂れることです。たとえば、野菜、海藻類、豆腐や油揚げなどの大豆製品など、お味噌汁に合う具材はバリエーション豊富で飽きがきません。
特に野菜がおすすめです。
野菜に火を通すと、かさが減ります。
つまり、生野菜で食べるよりも多くの野菜を体内に取り入れることが可能です。
野菜は、カリウムを多く含んでいますが、カリウムは水に溶け出しやすいため、野菜を多く使ったお味噌汁を飲むと、カリウムを体内に取り込むことになります。
カリウムは、味噌の塩分を排出させる働きもあるので、お味噌汁には非常に相性が良いといえます。
生活習慣病の予防効果
また、味噌に含まれるレシチンにはコレステロールを低下させたり、肝機能を改善させる効果もあるため、お味噌汁は生活習慣病の予防効果もあります。
睡眠の質向上
他にも味噌に含まれるトリプトファンという成分が、睡眠に効果があるメラトニンというホルモンの分泌をさせるため、睡眠の質を高める効果があります。トリプトファンは、体内で生成できないため、食べ物で摂取しなくてはならないという特徴があります。
もちろん、いくら体に良いからと言って、お味噌汁の飲み過ぎはよくありません。
1食1杯、1日3杯までにとどめておきましょう。
高血圧の人ほどおすすめしたいお味噌汁レシピ
ここまでで、お味噌汁は血圧上昇の抑制に大きな効果があるとわかりました。
お味噌汁には味噌と具材の組み合わせ次第で、さまざまにバリエーションをつけることができます。
ここでは、高血圧の人に特におすすめしたいお味噌汁をご紹介します。
おすすめの味噌とは?
味噌の主な原材料は、大豆・味噌・麹ですが、麹の種類によって、種類が三つに分けられます。
大豆と塩に、米を原材料とした米麹を加えて作ったものは米味噌、麦を原料とした麦麹を加えて作ったものは麦味噌になります。
大豆に種麹を付け、豆麹を培養して作ったものは、豆味噌になります。
大豆の種類、塩や麹の分量、発酵の過程で、味わいはさまざまですが、基本的に、血圧抑制効果に大きな違いはありません。
味噌に含まれる塩分がどうしても気になる、という場合には、市販の減塩味噌を使用すると良いでしょう。
お味噌汁に入れておきたい具材
高血圧の解消には、体内の塩分排出に大きく寄与するカリウムを効果的に摂取することが大切です。
海藻と豆腐
まず、ご紹介したいのは、海藻と豆腐の組み合わせ。
海藻にはカリウムが多く含まれている上、豆腐にはペプチド類が含まれますので、血圧の上昇抑制には良い組み合わせです。
定番のわかめはもちろん、とろろ昆布やひじきも豆腐とは相性が良く、手軽に使える食材です。
野菜
野菜は、全般的にカリウムを多く含むのでおすすめの食材ですが、特にカリウムの含有量が多く、あく抜きしなくても良い小松菜や、トマトを使うのがおすすめです。
トマトは意外な食材だと思われるかもしれませんが、トマトはカリウムを多く含むほか、βカロテン、リコピン、リノール酸が含まれており、美肌効果や脂肪燃焼効果も期待できるので、おすすめしたい食材です。
加えて、トマトにはグルタミン酸が多く含まれているので、うまみが濃く、だし汁を使わずともおいしいお味噌汁が作れるのが特徴です。
トマトのお味噌汁をベースに、さまざまな食材を組み合わせてもおもしろいです。
いも類
また、いも類も全体的にカリウムを多く含む食材です。
どのいもでも味噌汁には合いますが、里芋に含まれるカリウムの含有量が一番多いので、特におすすめです。
いも類と相性が良いたまねぎには血圧上昇を抑制するケルセチンが含まれているので、いも類と組み合わせてお味噌汁を作ると良いでしょう。
レシピ:たたき山芋となめこのお味噌汁
食物繊維・カリウムたっぷりでむくみ知らず!
材料
- 水150ml
- A山芋または長いも1/4本
- Aなめこ1/2袋
- B米#03大さじ1
- 「森で見つけたカツオの粉」ひとつまみ
作り方
- 山芋の皮をむいて一口サイズに叩いておく
- 水を沸騰させAを入れる
- Bの材料をお椀に混ぜておく
- Bを入れておいたお椀にAを注ぎ完成
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高血圧ぎみの方にはもちろん、普段の生活から健康を意識されている方にもお子さんにも美味しく楽しんでいただけます。
まずは、一度お試しください。
まとめ
味噌汁が誕生したのは、今から六百年以上も前の室町時代と言われています。
それほどの昔から日本人に愛されてきたお味噌汁には、血圧上昇を抑制するほか、がん・骨粗しょう症予防、そして、美肌効果など、健康にたくさんの良い効果があることがわかりました。
確かに、塩分の摂り過ぎは健康によくありません。
しかし、お味噌汁には、味噌に含まれる塩分摂取のデメリットを、摂取できるペプチド類や大豆イソフラボンのメリットが大きく上回っています。
血圧を抑制するペプチド類を多く含む味噌に、体内の塩分を排出させるカリウムを多く含む食材を組み合わせてお味噌汁を作れば、大きな抗高血圧効果が見込めます。
組み合わせる食材や、味噌の種類によって、味わいのバリエーションも豊富なお味噌汁は、今も、そしてこれからも日本人の食卓に欠かせない存在です。
健康を保つのに一番大切なのは「食」と言っても過言ではありません。
血圧を正常な状態に保つために、お味噌汁を食卓に上手に取り入れましょう。