透析患者のカリウム制限の必要性や具体的な方法について解説
「なんだか体がだるい…」「手足がしびれることがある…」 もし、あなたがそんな症状を感じているなら、それはカリウムの摂取量に関係しているかもしれません。
特に、腎臓の機能が低下している方や透析を受けている方にとって、カリウムの摂取管理は非常に重要です。
この記事では、腎臓とカリウムの関係性から、高カリウム血症のリスク、そしてOMISONOMORIが提唱する健康的で美味しい減塩味噌を活用したカリウム制限の具体的な食事術まで、詳しくご紹介します。
健康な体と豊かな食生活のために、ぜひ最後までお読みください。
腎臓とカリウムの深い関係を理解しよう
私たちは日々、様々な食べ物から栄養を摂っていますが、その中には体にとって大切なミネラルも含まれています。
カリウムもその一つで、私たちの体にとって重要な役割を担っています。
カリウムってどんなミネラル?体の働きと大切な役割
カリウムは、私たちの体にとって欠かせないミネラルで、主に以下の3つの大切な働きをしています。
- 細胞内の水分バランスを調整する: 細胞の中に存在する体液の浸透圧をコントロールし、細胞の正常な機能を保ちます。
- 筋肉の収縮や神経の伝達を助ける: 心臓をはじめとする筋肉の動きや、脳から体への神経の伝指令に深く関わっています。
- ナトリウムを体外に排出する: 体内の余分なナトリウムを排出することで、血圧の維持にも貢献します。
体内のミネラルの中でも、カリウムは細胞内液に最も多く存在しています。
健康な腎臓を持つ人であれば、食事から摂りすぎたカリウムは、尿としてスムーズに体外へ排出されます。
しかし、腎臓の機能が低下すると、この排出能力が落ちてしまうため、体内にカリウムが溜まりやすくなってしまうのです。
高カリウム血症とは?見過ごせないサインとリスク
血液中のカリウム濃度は、通常の範囲に保たれています。
これがを超えると「高カリウム血症」と診断されます。
カリウムが過剰な状態が続くと、以下のような様々な症状が現れることがあります。
- 胃腸の不調: 吐き気や嘔吐、下痢などの症状。
- 筋肉や神経への影響: 手足のしびれ、脱力感、筋力の低下など。
- 不整脈: 心臓の拍動が乱れること。
- 最悪の場合、心停止: 血液中のカリウム濃度がを超えると、命に関わる危険性もあります。
腎臓の機能が低下すると、余分なカリウムを尿として排出するのが難しくなるため、高カリウム血症に陥りやすくなります。
特に、透析を受けている方やその可能性のある方は、この点に十分な注意が必要です。
低カリウム血症とは?カリウム不足も体に異変を招く
逆に、血液中のカリウム濃度がを下回ると「低カリウム血症」となります。
通常の食事をしていればカリウムが不足することは稀ですが、以下のような場合に低カリウム血症になることがあります。
- 大量の発汗: 夏場に汗を大量にかくと、カリウムも一緒に排出されます。
- 嘔吐や下痢の継続: 消化器系の不調により、カリウムが体外に排出されやすくなります。
低カリウム血症が続くと、消化器官や筋肉、神経に悪影響を及ぼします。
具体的には、筋力の著しい低下、吐き気、嘔吐、便秘などの胃腸症状が見られます。
さらに悪化すると、自律神経に異常をきたしたり、呼吸に必要な筋肉に麻痺を引き起こしたりすることもあるため、こちらも注意が必要です。
透析患者さんがカリウム制限を必要とする理由
ここまでで、カリウムが体内でどのような役割を果たすか、そしてカリウムの過不足がどのような問題を引き起こすかをご理解いただけたかと思います。
では、なぜ透析を受けている方は、特にカリウム制限を意識する必要があるのでしょうか?
腎臓機能の低下とカリウム排出の困難さ
腎臓の機能が著しく低下し、透析療法を受けている患者さんは、尿の量が極端に少ない、あるいは全く出ないことがあります。
そのため、腎臓の働きによって体外へ排出されるはずの余分なカリウムが、体内に蓄積されやすくなります。
つまり、透析患者さんは、一般の人よりも血液中のカリウム濃度が高くなりやすい傾向にあるのです。
高カリウム血症は命に関わる危険もあるため、透析患者さんは、普段の食事からのカリウム摂取量を厳しく管理する必要があります。
1日のカリウム摂取目安量を知る
一般的に、1日あたりのカリウム摂取基準は、成人男性で約、成人女性で約とされています。
しかし、透析療法を受けている方の場合、この基準は当てはまりません。
腎臓の働きが通常の10%以下に低下すると、透析療法が必要となります。
カリウムは体に必要なミネラルではありますが、腎機能が低下すると体内にどんどん蓄積され、高カリウム血症を引き起こしてしまうため、非常に危険です。
そのため、透析患者さんは、1日のカリウム摂取量を以下に制限する必要があります。
この数字を意識し、日々の食事を工夫することが、健康維持の鍵となります。
関連ブログはこちら
カリウム摂取量を効果的に減らすための食事術
それでは、具体的にどのようにカリウム摂取量を減らせば良いのでしょうか。
ここからは、実践的な食事の工夫をご紹介します。
カリウムを多く含む食品と上手に向き合う
カリウムは、私たちの食卓に並ぶ多くの食材に含まれています。
特に注意したいのは、以下の食材です。
- タンパク質を多く含む食品: 肉、魚介類、卵、大豆製品(納豆、豆腐など)、乳製品は、タンパク質とカリウムの量が比例する傾向にあります。(例:生ハム100gあたり約、さわらやかんぱち約(100gあたり)、納豆1パック(約50g)で約
- 乾燥食品: 切り干し大根、ドライフルーツ、乾燥わかめなどは、水分が抜けている分、カリウムが凝縮されています。
- 生の果物、野菜ジュース、牛乳: これらの食品もカリウムを豊富に含んでいます。
具体的に、透析患者さんが1回の食事で摂取して良い目安量は以下の通りです。
- 肉類、魚介類: 1食につき
- 大豆製品(納豆など): 1食につき程度
- 乳製品: 1日あたりまでを目安に
これらの量を意識し、極端な制限ではなく、バランスよく摂取することが大切です。
下処理でカリウムを「溶かし出す」
カリウムは水に溶けやすい性質を持っています。
この性質を上手に活用して、食材の下処理をすることで、カリウム量を減らすことができます。
- 下茹でをする: 野菜などを茹でることで、カリウムが茹で汁に溶け出します。茹でた後は、水気をしっかり切ってから調理しましょう。
- 水にさらす: 細かく切った野菜などを水にさらすことでも、カリウムを減らせます。水に触れる面積を増やすために、食材は細かく切るのがポイントです。
これらの下処理を組み合わせることで、食材に含まれるカリウムを20%程度減らすことができると言われています。
カリウムの少ない食品への置き換えも効果的
カリウムを多く含む食材を、より少ない食材に置き換えるのも有効な方法です。
- ほうれん草や小松菜の代わりに: カリウム含有量の低いもやしなどで量を補いましょう。
- 生の果物の代わりに: 缶詰の果物であれば、シロップにカリウムが溶け出しているため、果物だけを食べるようにすればカリウム摂取量を大幅に減らすことができます。
- 飲み物: 牛乳や果汁100%ジュース、野菜ジュースはカリウムが多いため控えめに。代わりに麦茶やウーロン茶などを選ぶと良いでしょう。
低カリウム志向の味噌汁レシピ
毎日の食卓に欠かせない味噌汁も、ちょっとした工夫で、低カリウム志向に仕上げることができます。
食材もご家庭にある、ごく一般的なものを使っているので、無理なく取り入れることができそうです。
材料(2人分)
- 白菜の葉 60g(1~2枚)
- 油揚げ 1/2枚
- 水100ml
- だし汁100ml
- 味噌 大さじ1
※カリウム制限の他に水分制限がある方は 1日の水分量の調整が必要なため、必ず医師の指示を仰いでください。
作り方
- 白菜を白い茎の部分は5mm幅、葉の部分は1cmほど、油揚げを5mm幅に細切りにします。
- 鍋で湯を沸かしに白菜の茎を入れ、2分茹でたら、葉と油揚げを入れ、茹でます。
- 10秒ほどたって、茹で上がったら、20分以上水に浸して冷ましておきます。
- 鍋にだし汁を入れ、火にかけ、沸騰したら、水気をしっかりと絞った具材を入れ、温めます
- 火を止め、味噌を溶き入れたら完成です。
定番の味噌汁ですが、野菜を下茹でし、さらに水に浸すことで、カリウムをしっかり除去できます。
カリウムの性質をうまく利用し、簡単でしかも美味しい低カリウムレシピを食卓に取り入れましょう。
まとめ
人間の健康な体作りに欠かせないカリウムですが、機能が著しく低下した腎臓にとっては、摂取に注意が必要です。
多少カリウムの値が高くなっても、自覚症状があまりないのが厄介な点です。
腎機能が低下した場合には、しっかりと血液検査をして、血中のカリウム濃度が高くなりすぎていないか、しっかりとチェックしましょう。
また、透析患者の方にとっては、毎日の食事でカリウム摂取が過多にならないようにコントロールしていくことが大切です。
私たちが何気なく食べている身近な食材の中には、カリウムを多く含むものがたくさんあるため、知らず知らずのうちにカリウムを過剰摂取してしまっていた、などということもあり得ます。
カリウム含有量の少ない食材を選ぶ、調理方法を工夫する……、正しくカリウムについて知っていれば、そんなに難しいことではありません。
腎臓に負担をかけないためにも、血中のカリウム濃度を適切な状態に保つように心がけましょう。
Instagram : https://www.instagram.com/omisonomori/reels/