訪問看護師に同行して感じた「食」課題

訪問看護師に同行して感じた「食」課題

監修者

森 美樹(管理栄養士)

茨城県で生まれ、子供のころから母の手前味噌で育ちました。管理栄養士としては、病院・ 特養で栄養管理に従事。40 代になり、麹の美しさに惚れ込み、お味噌の魅力を知りました。 食事制限のある方もない方も、食卓を華やかに心豊かになっていただけるよう、発酵食品を 取り入れた食習慣のすばらしさを提案していきたいです。

管理栄養士の指導

私は、管理栄養士です。病院等で栄養指導をするのが主な仕事です。

「Aさん、塩分制限が必要です。塩気の強いものは控えましょう、汁物は残してください。」今まで私が伝えてきた指導の一部です。

とある患者さんとの出会い

Aさんは飲食店を経営し、ご自身も食べることが大好きで、食へのこだわりも強い方でした。

色々な土地を旅して、美味しいものを食べに行くことが趣味で、何よりの楽しみでした。

しかし、ある日、体調不良のため受診すると「糖尿病」という診断。

食事制限が必要となりました。

しかし、痛くもかゆくもない。

ちょっとだるいだけだったので、これまで通り「食」を楽しみ続けました。

仕事が忙しくなり、休みの日は出かけたり、家でゆっくり体を休めたり、病院から足が遠のいて数年、足のむくみが気になり、再度受診することにしました。

訪問診療のはじまり

診断された病名は、「糖尿病性腎症」糖尿病にかかってから、10~15 年以上経過後に発症することが多いそうです。

血液中の糖分が高い状態が続くと、腎臓の機能が低下し、腎障害の進行とともに腎不全にいたる病気です。

心疾患を合併し、現在は仕事を辞めて訪問診療を利用しています。

先日「血液透析」をスタートさせ、週3回病院に通い始めているそうです。

私が思っていた管理栄養士の仕事は、Aさんのような方のために、「食事制限をさせる役割」だと思っていました。

検査値をよくするために、選択肢のない食生活を提案する私とAさんとの距離は広がるばかりで、お会いするたび顔をしかめるAさん。

「食」本来の意味

食の楽しみ

私はAさんに寄り添うために何が必要なんだろう。

Aさんは食べることが何よりも楽しみでした。

しかし、続けてきた生活習慣によって、その楽しみを失うことになります。

これからまだ何十年も生きていく中、楽しみを失ってしまった方に、私は毎回食事内容の確認と「食事制限」「塩分制限」「水分制限」についての話をします。

どんな食でもポジティブに

「食」は人生最期まで至福の時間であるはず。

健康な方にも、病気で食事制限が必要な方にも「食の選択肢」はあるべき。

管理栄養士である私の役割、それは、食事制限のある方に寄り添い、設定された食事の範囲内でどれだけ「食」を楽しいと感じていただけるかを提案することだと改めて感じた症例をご紹介しました。

「Aさん、塩分制限が必要です。塩気の強いものは控えましょう、汁物は残してください。」ではなく、
「Aさん、◆◆ではなく□□に代えて試してみましょう」
「▼▼が食べたいときは、透析前に食べましょう」というポジティブな表現に変えることを心がけ、空腹だから食べるという「食」ではなく、私たちが健やかに生きていくための「食」の本来の意味を管理栄養士として伝えていきたいと考えています。

身体は食べたものから作られる。

「もしも願いが叶うなら、何をお願いしますか?」

その答えの全ての土台は、「健康」であることが基本だと思います。


『食習慣を変えて、人生を変える』簡単なようで、ちょっと難しい。

このお手伝いを OMISONOMORI を通して提案していきたいと思っています。

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